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徒 歩 進 香[巡 礼]

ハマるぞ台湾!道教文化

[道教巡礼]大甲媽祖遶境進香 完全攻略

 

 

世界三大宗教イベントの一つにも認定されている、台湾最大の進香(巡礼)イベント。台中市大甲区にある「大甲鎮瀾宮」を出発し、嘉義県新港郷に位置する「新港奉天宮」まで神輿とともに歩いて往復します。 

 

「心太軟」で有名な台湾を代表する歌手任賢齊がメガホンを取ったドキュメンタリー映画『媽祖迺台灣』を観て、興味を持った方もいるかもしれません。

 

 

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 [大甲媽祖遶境進香のポイント]

  1. 大甲鎮瀾宮が主催する100年以上の歴史を持つ道教の巡礼イベント
  2. 毎年数十万人が参加し、世界三大宗教行事の一つに選出
  3. 媽祖を神輿にのせて、150km以上離れた新港まで歩いて往復
  4. 申込はなく、信者でなくとも、外国人でも、心さえあれば参加可能
  5. ウォーキングイベントの感覚で歩いている参加者も多い 

 

 

※「進香」ってなに? という方は、まずはこちらの記事をご覧ください ※

 

※ 実際に歩いた様子については、こちらの参加レポートへどうぞ ※ 

 

※ より深い知識を得たい方はこちらをご参考ください ※ 

 

 

[目次]

 

 

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概要

【大甲鎮瀾宮天上聖母遶境進香】 

  《台湾文化を代表する世界に誇る巡礼イベント》

 

主催廟:大甲鎮瀾宮[1732年建立]

出発地:大甲鎮瀾宮(台中市大甲区)

目的地:新港奉天宮(嘉義県新港鄉)

開催時期:毎年3~4月頃

開催日数:9日間

移動距離:往復約350km

参加費:なし(申込不要)

参加人数:40万人以上

     見物客などを含めると200万人以上 

特徴:20世紀初頭に始まった100年以上の歴史を有する宗教イベント。毎年台湾において最大の盛り上がりを見せる台湾文化を代表するイベントでもある。

住所:臺中市大甲區順天路158號 Google マップ

アクセス:大甲駅下車徒歩6分

 

公式Youtube CH:大甲鎮瀾宮 - YouTube 

参考HP:

財團法人大甲鎮瀾宮全球資訊網

大甲鎮瀾宮媽祖巡礼活動(行事・信仰)-台湾宗教文化地図-臺灣宗教百景

 

 

雰囲気は?

百聞より一見に如かずです。まずはこちらの映像でその雰囲気を感じ取ってみてください。

 

 

※ 映画「媽祖迺台灣」予告編 ※ *再生後、[Youtubeで見る]を選択してください。

 

なんだかワクワクしてきませんか?

縁があれば、皆さんもきっとあの波打つ人のうねり中で、自分自身を見つけることになるでしょう。私も大甲媽祖遶境進香に参加して、この世界に魅了された一人です。時折ふと、進香路上での光景を懐かしく思い出します。

 

 

大甲鎮瀾宮について

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大甲鎮瀾宮は18世紀前半に建立された、台中市北部に位置する台湾を代表する媽祖廟であり、大甲五十三庄の信仰の中心です。

 

かつて台湾の媽祖廟の中では、北港朝天宮や鹿港天后宮、新港奉天宮、台南大天后宮、彰化南瑤宮などが有名であり、大甲鎮瀾宮はそれら廟と比べてもそれほど重要な地位を占めてはいませんでした。しかし進香の評判の高まりとともに、廟としての名声もますます高まっていきます。いまでは台湾全土、世界各地に信者が広がっています。

 

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鎮瀾宮の進香の歴史は、一説によると、20世紀初頭に大甲から北港に向かう牛の商人たちとともに始まったと言われています。かつて参加者は「進香」ではなく、「媽祖と"刈火"に出かける」、「媽祖と"焼金"に行く」と言っていたそうです。

 

かなり貴重な50年前の進香の様子を収めた映像が残されています。その当時で3、4万人の参加者がいたようです。参加者の服には「大甲北港進香」と書かれています。

 

その後1988年には、北港朝天宮から新港奉天宮へ目的地が変更になりました。当初は30人ほどでスタートした進香も、現在では数十万人が歩く宗教イベントへと成長しています。

 

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鎮瀾宮祀られている7体の媽祖像の中で、進香の際神輿とともに出陣するのは、湄洲媽、三媽、四媽です。大媽は参拝者のために廟を守りお留守番し、二媽は特に何もしません。それぞれの媽祖は、性格や得意分野が異なります。これらすべての媽祖を総括して大甲媽祖と称します。

 

鎮瀾宮の媽祖や進香の歴史については、実際公に発表されたものを含めて複数存在しています。廟建立当初の媽祖の来歴については諸説あり、また進香も北港に向かう以前に、中国へ渡っていたとも言われています。これらについては多くの議論が行われています。

 

私自身も以前かなり調べてはみたのですが、さまざまな意見が飛び交っており、確かなものを見つけることは出来ませんでした。実際台湾の廟の歴史は、多くの場合において史料が残されておらず、口伝が多くなっています。ただ信徒たちにとっては、それら歴史的背景などさほど重要ではなく、いま現在の大甲媽祖への信仰こそが大切なのです。

 

※大甲媽祖遶境進香の変遷について、下記リンクにて詳しく解説されています。(中国語)

戰後大甲媽祖進香的路線與時間變化 – 民俗亂彈

 

 

進香の流れ

2018年の行程は下の図のようになります。

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[往路]

初日 4/14 彰化南瑤宮 駐駕

二日目 4/15 西螺福興宮 駐駕

三日目 4/16 新港奉天宮(目的地) 駐駕

[儀式]

四日目 4/17 午前8時祝賀の儀式

[復路]

五日目 4/18 西螺福興宮 駐駕

六日目 4/19 北斗奠安宮 駐駕

七日目 4/20 彰化天后宮 駐駕

八日目 4/21 清水朝興宮 駐駕

九日目 4/22 大甲鎮瀾宮 戻り

 

進香初日は、日付が変わる前の深夜23時には大甲鎮瀾宮を出発します。日程表には初日4月14日とありますが、実際には4月13日深夜23時に出発するのです。そこで参加者が大甲入りするのは、第一日目の前日となるという点に気を付けてください。ちなみに開催日は毎年異なります。また大甲媽祖遶境進香には毎年テーマがあり、この年は図にもあるように「付出」(尽くす)です。

 

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※駐駕地となる彰化南瑤宮、西螺福興宮、北斗奠安宮

大甲を出発後、神輿は多くの廟に短時間立ち寄りながら、初日の目的地(駐駕地)である彰化南瑤宮で休憩、2日目も深夜に出発、西螺福興宮を目指しその流れを繰り返します。3日目に進香の目的地である新港奉天宮に到着、4日目は終日儀式が行われ、5日目の日付が変わる頃に復路がスタートします。最終日の9日目には頭香らにより路上に設置された仮設の祭壇で献香の儀式が行われ、深夜の23時から1時の間に大甲鎮瀾宮に戻りゴールとなります表にある日々の駐駕地となる廟は毎年固定です。

 

もともと進香の日程は8日間でしたが、規模が大きくなるにつれ大甲に戻る時間が遅くなる問題が発生し、2010年より清水での駐駕を増やし9日間となりました。

 

【ルート】

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[往路] 

初日   大甲区 ー 清水区沙鹿区龍井区大肚区 ー 彰化市 [駐駕地]彰化南瑤宮

二日目 彰化市 ー 花檀郷 ー 大村郷 ー 員林市 ー 永靖郷 ー 田尾郷 ー 北斗鎮 ー 溪州鄉 ー 西螺鎮 [駐駕地]西螺福興宮

三日目 西螺鎮 ー 二崙郷 ー 虎尾鎮 ー 土庫鎮 ー 元長郷 ー 新港郷 [駐駕地]新港奉天

四日目 新港奉天[生誕を祝う儀式]

 

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[復路]

五日目 新港郷 ー 元長郷 ー 土庫鎮 ー 虎尾鎮 ー 西螺鎮 [駐駕地]西螺福興宮

六日目 西螺鎮 ー 溪州郷 ー 埤頭郷 ー 北斗鎮 [駐駕地]北斗奠安宮

七日目 北斗鎮 ー 田尾鄉 ー 永靖郷 ー 員林市 ー 大村郷 ー 花檀郷 ー 彰化市 [駐駕地]彰化天后宮

八日目 彰化市大肚区 ー 龍井区 ー 沙鹿区 ー 清水区 [駐駕地]清水朝興宮

九日目 清水区 ー 外埔区 ー 大甲区 大甲鎮瀾宮

 

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上記の予定表のように、神輿は途中多くの廟に短時間立ち寄ります。参加者(随香客)は各廟でお参りをし、旗に御朱印を押して、平安符(お札)を結び付け、過爐(旗を手に持ち、炉の煙の上で時計回りに三回回す)をします。進香旗を持たない方はお参りだけを行います。近年では、御朱印帳や大きな布に御朱印を押す人も増えてきています。ちょっと四国遍路に似ていますね。

 

初日だけでも30近い廟に停駕します。廟に到着すると神輿は神様の挨拶である、左右にステップを踏む動きの「踩大小禮」を行います。立ち寄る廟は年によって多少変更があるかもしれません。さらには予定表にないルート上に設置された仮設の神壇や、関係者とつながりのある施設などに立ち寄ることもあります。そのため、表に記載されている時間はあくまでも参考であり、通常2、3時間は遅れますので、途中から参加される方は注意してください。

 

表には初日21時半南瑤宮到着、二日目深夜1時出発とあります。予定より遅れることを考えると、神輿とともに歩くことで仮眠の時間すらとれないことになってしまいます。場合によっては起駕時間を過ぎての到着となることもあり、その際は儀式が終わるとすぐに出発します。神輿の担ぎ手は交代しますが、徒歩参加者に代わりはいません。この問題については改めて触れてみたいと思います。

 

また行程が遅れる一番の要因は「鑽轎脚」(神輿くぐり)ですが、それ以外に「搶轎」(神輿の強奪)があります。それぞれの詳細についても、後半の方で解説いたします。

 

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進香の中でも盛り上がるのは、大甲スタート、新港到着、大甲ゴールです。

往路と復路がありますが、往路は日程が短くやや急ぎ足、復路の方がのんびりペースです。そこで復路だけ参加という方法も十分ありですよ。仕事でなかなか続けて休みが取れない人たちは、往路1日、復路1日といった歩き方をしています。

 

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進香の日が近づくと、立ち寄り先の廟やルート上にこのような「香條」が貼られ、進香日程を地元住民の方々に伝えています。

 

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地域住民の方々は、その進香の日に合わせて家の前にお供え物をならべ、媽祖の神輿がやってくると、金紙を焼きながら、線香を手に家族の健康や平安など媽祖の庇護をお祈りします。 これは「擺香案」と呼ばれます。

 

 

目的地について 

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こちらが進香の目的地となる嘉義県北部に位置する新港奉天宮です。ここは19世紀初頭に建立された台湾を代表する媽祖廟の一つであり、かつて洪水で流された笨港天后宮が祀っていた三体の媽祖像のうちの一体が祀られています。

 

一般に、笨港天后宮の大媽が新港、二媽が北港に祀られていると言われていますが、これには諸説あり、正統の後継者を主張する争いが、新港と北港の間で起きています。ほかにも鹿耳門や南鯤鯓などでも似たような争いがあります。

 

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奉天宮は媽祖だけではなく、もともとは虎爺の総本山としてその名を馳せ、「北港の媽祖、新港の虎爺」と言われていました。ほかにも一般公開はされていませんが、昭和天皇から贈られた「今上天皇御寿牌」が唯一完全な状態で保管されています。

奉天宮は毎年進香団をもてなすためにかなりの費用を費やし、近年は媽祖の廟としても有名になりました。お参りに訪れる際は、嘉義駅前から北港行きバスが便利でしょう。(画像は奉天宮FBより)

 

大甲鎮瀾宮の進香はもともと北港朝天宮に向かっていました。それが1988年より、新港奉天宮に目的地が変更となりました。これからも分かるように、大甲鎮瀾宮の媽祖は新港奉天宮から分霊されてはいません。歴史ある進香によくある目的地が分霊元ではないというケースにあたります。これが大甲媽祖「遶境」進香といったように、名称に「遶境」が含まれている理由の一つです。

 

奉天宮に到着すると、盛大なお祝いの儀式が行われ、それはもうものすごい人人人人人です。上の映像をご覧ください。 普段は静かな田舎町が、進香団や見物客で埋め尽くされます。

 

進香で行われる儀式には、以下のものがあります。

  1. 筊筶典禮 元宵節の18時に行われる進香日程決定の儀式
  2. 豎旗典禮 廟の入口の柱に旗を立てかけ、進香の始まりを告げる
  3. 祈安典禮 出発前日に行われる進香団の安全と成功を祈る儀式
  4. 上轎典禮 祈安典禮の後、媽祖像を神輿に乗せる儀式
  5. 起駕典禮 神輿が出発する儀式
  6. 駐駕典禮 新港奉天宮に入廟、媽祖像を安置した後行われる媽祖に感謝する儀式
  7. 祈福典禮 新港奉天宮に到着した翌日早朝5時に行われる信者のための祈祷の儀式
  8. 祝壽典禮 祈福典禮の後、午前8時に行われる媽祖の生誕を祝う儀式
  9. 回駕典禮 復路に出発する前日夕方行われる媽祖に進香団の無事を祈る儀式
  10. 安座典禮 大甲鎮瀾宮に戻った後、媽祖像を鎮座させる儀式

 

 

参加の方法

参加に申込は不要、"心"だけあれば大丈夫です。ウォーキングイベントの感覚で参加している人も大勢おり、あまり宗教染みてはいないといった点からも参加しやすいと思います。 参加費というものは存在しないため、収めたい方はその分のお金を鎮瀾宮の香油箱に投じてもいいですし、ボランティアとして参加しているグループに寄付をしてもいいでしょう。進香にかかる費用の多くは頭香らが負担しています。

 

全行程の参加、往路または復路どちらかの参加という人も多いですが、基本どこから歩き始めても構いません。途中から合流し、途中で離脱してもOK。その際は媽祖の神輿もしくは廟の方角に手を合わせて、参加(起馬)や終了(下馬)の挨拶をします。

 

※ 申込から参加までの流れについてはこちらへ ※

 

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※駅前で媽祖の到着を待つ人たち

参加のスタイルは、歩き、自転車、バイクと様々ですが、やはり歩きに勝るものはないと私は思っています。さらに歩きの中でも、バックパック派と手押し車派に分かれます。 手押し車は荷物を背負わなくても済む分、だいぶ楽にはなりますが、ぶつかると危険なため、人ごみの中、特に神輿の近くを歩くことができないという欠点もあります。

 

いまは便利なもので、ネット上で神輿の現在地の確認が可能です。下記のリンクでは、神輿を追跡するためにボランティアが交代でGPSを手に神輿のそばを歩き続けています。途中から合流される方は、こちらの位置情報を参考にするといいでしょう。さらにこのページでは、過去のルートを見ることができるので、歩きのシミュレーションをしたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

2019天上聖母己亥年遶境進香即時衛星定位服務網

 

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大甲媽祖では白沙屯媽祖のような観光バスプランがありません。そこでどうしてもバス参加したいという方は、その年の頭香、貳香、叁香、贊香を担う廟に連絡してみてください。廟が組織する進香団に参加させてもらえるかもしれません。ただその際は、何かしらの役目をお願いされる可能性もあります。

 

また初心者の方向けに1~3日間の歩き体験コースも用意されています。申し込みが始まるとすぐに枠は埋まってしまいますので、希望される方は受付開始とともに申し込みを行うことをおすすめします。

2018大甲媽遶境進香-跟著媽祖輕旅行

 

他に参加の注意点として、喪に服している、または出産したばかりなど、参加することをタブーとされる場合もあります。また初参加の人は、神様へ敬意を払うためにすべて新しい洋服で参加することとされています。

 

 

事前のお参り

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本格的な信者の方たちの中には、前もって擲茭(占い)でその年の進香に参加していいかどうか媽祖にお伺いをたてる人もいます。

 

まあそこまでしなくても、出来れば事前に大甲鎮瀾宮をお参りし、媽祖への参加の挨拶は済ませておきたいものです。このお参りが実質、参加申込みのような意味合いを持ちます。毎年元宵節(旧暦1月15日)を過ぎると、多くの参加者が鎮瀾宮をお参りに訪れます。

 

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その際には、ぜひ廟内外で売られている帽子やシャツ、御守(香火袋)、紅綵(紅布條)などを購入してください。これらを持つことで、形の上からも進香団の仲間入りです。

 

もし進香旗を所持したい場合は、前もってポエ占いで媽祖の許可を得てから購入するようにしましょう。進香旗は所持すると3年は参加しないといけないと言われています。

購入した旗や御守りなどは、忘れずに廟内の炉で「過爐」(旗などを手に持ち、炉の煙の上で時計回りに三回回す)してください。過爐は主爐のみでいいそうですが、私を含めて多くの参加者は、天公爐と主爐の2カ所で行っています。

 

また進香3日前には、信者たちは各家でお供え物を用意し、神兵の象徴である進香旗に進香道中の安全を祈る「犒軍」の儀式を行います。さらに進香から戻った後も、同様に犒軍の儀式をおこない、神兵の庇護に感謝します。

 

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出発当日は出発する前に鎮瀾宮をお参りし、進香旗に御朱印を押し、平安符を結びつけ、過爐します。ただ御朱印と平安符はあの人ごみの中では困難になるため、私は事前のお参りの際に済まし、当日は過爐だけをしています。さらに大甲地元の人の中には、進香旗に香火袋を結び付け歩いている人もいます。

 

新港到着後は、進香旗は丸めて赤い糸で縛り(封旗)復路を歩きます。復路の廟では受け取った平安符を過爐し、大甲鎮瀾宮に到着後旗を開いて集めた平安符を結び付けます。

ただ封旗はそこまで厳格なものではなく、封旗せずに往路同様御朱印を押し、平安符を結びつけ、過爐してもかまいません。実際こうしている人たちの方が多いように思います。

 

ほかにも、進香旗はトイレなど不浄の場所に持ち込んではいけない、地面に直接置いてはいけない、逆さにして持ち歩いてはいけないなどという禁忌がありますので、進香途中では十分気をつけてください。

 

 

歩きのポイント

進香団の列は神輿の前後に長く伸びています。おそらく場所によってはその全長は数kmに及ぶかもしれません。なぜならルートが決まっているため、神輿より先行して歩く人たちが大勢いるからです。

 

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特に全行程完歩を目指す人たちは、出発日の午前中からお昼にかけて出発しています。なかには出発日の数日前に歩き始める人たちさえいます。当然神輿の後方にも長い隊列が続きますので、ルート上は至る所で隨香客(参加者)を見かけることになり、特に神輿の後は進香団で道路が埋め尽くされます。

 

では、長い進香団の行列のどの辺りを歩くのがいいのでしょうか?

 

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一番イベントの雰囲気を感じ取れる場所は、神輿のすぐ近くだと思います。ただ当然ものすごい人混みで危険です。そこで、少しの間だけ神輿の近くを歩き雰囲気を味わった後は、神輿より先行して歩くといいでしょう。神輿の後は止まったり、走ったりとペースがばらばらで体力を消耗するからです。

 

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大甲媽祖進香団は以下の内容で構成されています。

報馬仔 - 頭旗 - 三仙旗 - 開路鼓 - 大鼓陣 - 頭香 - 貳香 - 叁香 - 贊香 - 繡旗隊 - 福德彌勒團 -  彌勒團 - 太子團 - 神童團 - 莊儀團 - 哨角隊 - 三十六執士隊 - 轎前吹 - 令旗 - 馬頭鑼 - 涼傘 - 神轎 - 自行車隊 - 隨香客

このうち高い人気を誇る五大団は、福德彌勒團、彌勒團、太子團、神童團、莊儀團です。またこれら陣頭以外にも、多くの花車などが参加しています。

 

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[各陣頭グループについて]

○報馬仔 進香団の先頭を歩き、道の安全を確認しつつ、地元の信者らに神輿の到着を伝えます。ただ大きな廟の近くのみで、その姿を見ることができます。

○頭旗 神様の旗であり、進香団の先頭を進みます。邪気を払う効力があります。2基の頭燈と3本の三仙旗とともにグループを組みます。頭燈は進香団の目の役割を果たします。三仙旗の真ん中の黄色い旗は媽祖を現わし、両脇の青い旗が媽祖を護衛しています。

○開路鼓 太鼓や笛を鳴らし、頭旗とともに進香団の道を開き、導く役目を担います。

○大鼓陣 開路鼓の後に続き、トラックに楽器隊が乗り演奏します。進香団ににぎやかな雰囲気をもたらします。

○轎前隊伍(頭香・貳香・叁香・贊香) 「搶香」の順序を表しています。搶香とは信者を代表して優先的に媽祖へお参りできる順番です。復路の永靖の辺りで行われます。

日程決定の儀式の後、希望する団体や個人が申し出て、話し合いで選ばれます。それぞれ数百万元から1千万元以上の費用を負担しています。

○繡旗隊 日程決定後、希望者が参加を申し込みます。主に女性で組織されます。

○福德彌勒團 彌勒羅漢、達摩羅漢、古佛羅漢、福德正神、玉女神佛の着ぐるみたちが踊りまわります。

○彌勒團 福德彌勒團から分かれて組織されたグループです。彌勒羅漢、彌勒祖師、彌勒古佛らの着ぐるみたちが踊りまわります。

○太子團 哪吒と濟公の着ぐるみが踊りを見せます。

○神童團 招財と進寶の神様の着ぐるみが踊りながら歩きます。 

○莊儀團 媽祖を保護する千里眼と順風耳の将軍がコンビで歩きます。

○哨角隊 ラッパや銅鑼で構成される音楽グループです。前方に墓地や忌中の家を見つけた際は速やかに神兵を呼び寄せ、神輿を邪気から守る役割を担います。

○三十六執士隊 木製の看板「長脚牌」を手にするグループと武器「執士牌」を持つグループから構成されます。前者は道を開き、後者は神輿を保護する役目を担います。主に男性で組織され、参加希望者が申込を行います。

○轎前吹 笛と小太鼓により神輿の前の道を開く役目を負います。また入廟時にも演奏を行います。

○令旗 黄色い四角形の旗の真ん中に黒く「令」と書かれています。邪気を払う効果があります。

○馬頭鑼 涼傘とともに歩き、進香団を指揮する役目を担います。また哨角隊に合図を送っています。

○涼傘 円柱型の傘であり、古代では皇帝のために日差しを遮る役目を担い、現在では神輿を導く役目を負っています。他の神輿と遭遇した際は、涼傘同士で挨拶をかわし敬意を示します。娘傘とも呼ばれます。

○神轎 媽祖の鎮座する神輿であり、8人で担がれます。廟に着いた際には、神様の礼を尽くした挨拶である「踩大小禮」を行います。神輿グループは、聞くところによると大甲、大安の2つがあり、一年交代で担当しているようです。

自行車 自転車で組織されるグループです。いくつかの廟に入廟の際には鉄の壁を造り、押し寄せる信者らから神輿を守る役目を担います。

○隨香客 神輿に付き添い歩く信者たちです。なかには火のついた線香を手に、歩き続ける信者もいます。

 

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私のベストポジションは、進香団の先頭を歩く頭旗(先頭の旗)と神輿の間です。この間は大体数百mから数kmぐらいの距離があります。

 

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さらに頭旗の近くにいると、進香団の先頭を歩き、道の安全を確認しながら、神輿の到着を告げる役目を担う報馬仔に出会えるチャンスも増えるでしょう。報馬仔はずっと歩いている訳ではなく、大きな廟への到着前ではないと現れません。

 

陣頭のグループは基本交代制で、車で移動し、停駕地の近くや市街地で降りて短い距離を歩きます。つまりずっと歩き続けているのは、頭旗、涼傘、神輿などごく一部のみです。

 

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ただ実際の歩きでは、頭旗からも大きく先行し、その日の目的地周辺もしくはさらに先の街で神輿の到着を待つということが多くなります。

なぜかと言うと、上の方でも書きましたが、神輿が駐駕地の廟に着くのは夜遅くになることが多く、すぐに深夜出発となると仮眠する時間すらとれないからです。

 

そのため、特に全行程もしくは往路復路のどちらかを完歩する目的の人は、必然的に神輿より先行し、仮眠時間を捻出する必要がでてきます。そこで遅くとも夕方ぐらいには、その日の駐駕地もしくはさらに先の街に到着し、近くで寝場所を探し深夜の出発に備えましょう。

 

初日は多くの参加者が深夜の神輿の出発を待たず、まだ明るいうちに大甲を出発しています。つまり完歩を達成するには、神輿のそばを歩いたり、イベントのにぎやかな雰囲気を味わうこと、さらには大甲溪の美しい花火、搶轎の喧騒などをあきらめなければなりません。完歩している参加者の中には、進香道中で一度も神輿に会うこともなく歩き終えている人も多いように思います。

 

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こうして常に先行しながら、時間という貯金をつくりだし、体力に合わせて途中で臨機応変に長めの休憩や仮眠をとるようにします。昼寝るか、夜寝るかについても、大きな戦略ポイントです。

 

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※深夜の進香の道(北斗)

先行する場合は、周りの徒歩参加者がまばらになることで、夜間、特に真っ暗な田舎道の歩きは危険になるため、出来る限りほかの徒歩参加者について歩くようにしましょう。

特に雲林県に入った後の吳厝から土庫の間は、街灯もないポイントが多く、夜一人で歩くことは危険だと言われています。そのため途中の廟を端折って、虎尾の街中を通り直接土庫に入るルートを選ぶ人もいるようです。

 

進香の期間中、停駕・駐駕地となる廟は基本24時間開いており、深夜に到着しても問題はありません。ただごく一部、西螺福興宮のように夜間扉を閉める廟も存在します。もしそのようなケースにぶつかった場合は、全廟の御朱印を集めていたり、よほど思い入れのある廟でなければ、扉の外から手を合わせて先に進むといいでしょう。

 

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参加者の中には、途中の廟にはほとんど立ち寄らずに、新港まで歩き通すことを目的とする人たちもいます。神輿と同じルートを通らずに、ショートカットできる道を選んで歩くことも可能です。

 

これについては、参加者それぞれの目的に合わせたやり方でいいかと思います。寄れるところだけ寄る、分かれ道ではその都度判断という方法でもいいですね。廟はトイレ休憩ポイントとしても重要になってきます。私は復路で道に迷い、誰もいない道をずっと歩き続け、全く違う方向から停駕地の廟に到着しました。 

 

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神輿の近くを歩きたいけれど人ごみを避けたい場合は、神輿が遠回りをするポイントを選んでそばを歩いてもいいでしょう。そのような場所では、付き添い歩く参加者も比較的少なくなります。

往路で言えば、例えば沙鹿駅周辺、さらには大度橋を渡り彰化市に入った後、そして二崙から虎尾辺りでは、神輿はぐるっと遠回りをしますが、多くの参加者はまっすぐ突っ切ります。

 

こうした場所は、「鑚轎脚」や神輿に付き添う絶好のポイントと言えるかもしれません。また台中や彰化辺りよりも、雲林県に入った後の西螺以南の地域の方が、神輿と共に歩く参加者は少なくなる傾向にあります。

 

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参加者の中には、グループを作って集団で歩く人たちも大勢います。もし台湾に知り合いがいる場合は、そのようなグループに参加させてもらってもいいでしょう。出発日が近づくと、FBやLINEグループなどでも参加者を募っています。集団で歩くことで、寝場所の確保、暗い夜道、長く続く直線道路の絶望、さらには盗難などの問題は解決できます。

 

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私は基本個人で歩くことが好きなため、グループには参加しません。事前にLINEやFBのグループなどで情報交換はしますが、当日はひとりです。途中で知り合いに会っても、少し雑談をして別行動をとります。当然真っ暗な夜の田舎道もひとりです。自分のペースで歩き、自分のタイミングで休憩し、自分の内面と向き合う、このスタイルが私には合っているようです。ただ時折、路上で知り合ったほかの参加者たちと話をしながら歩いたりもします。

 

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※仮眠をとらせていただいた彰化市内にある廟

睡眠場所に心配のある人、特に女性だけの場合は日帰りで歩けるルートを検討されてもいいかもしれません。 

 

一案ですが、出発前日の午前中には大甲に入り、お参りやグッズ購入を済ませます。その日の深夜、出発の盛大な雰囲気を楽しみ、夜通し沙鹿辺りまで神輿の前後を歩いた後先行し、夕方ごろ彰化駅から電車でホテルまで帰るという方法です。0泊2日となりますが、これだけでも雰囲気を味わうには十分ですね。歩きは一日だけでも全く問題ありません。最初から最後まで歩く人は、ほんのごくごく一部だけですから。

 

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実際女性ひとりで歩いている人も大勢いますので、もしチャレンジしたい方がいたとしても、それほど心配はしなくても大丈夫です。ただ真っ暗な田舎道などでは、できるだけほかの参加者について歩くようにしましょう。

 

0泊2日で参加するとしても、50km以上は歩くことになります。長距離の歩きに自信がない方は、途中バスや電車でワープする方法もありですよ。

進香最大の特徴である人とのふれあいや人情味を主に味わいたい場合は、北斗~新港あたりに狙いを定めて、日中を中心に参加をするといいでしょう。深夜の田舎道は静まり返り、"好兄弟"しか待っていません。

 

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友人と一緒に参加される方は、人ごみではぐれないように注意して、万一はぐれた場合はコンビニのwifiにつないでSNSで連絡を取り合うか、前もって落ちあう場所(廟)などを決めておくといいでしょう。道すがら知り合った人たちと一緒に歩く時も、結構簡単にはぐれます。

 

私は復路の彰化市内の廟で休憩中にとある参加者の女性と知り合い、少しの間一緒に行動していましたが、深夜の大混雑の中ではぐれ、その後二度と会うことはありませんでした。そこで進香中に知り合った方とは、なるべく早めにラインなどを交換しておくといいでしょう。私も後になって、連絡先を聞いておけばよかったと思う人が何人もいます。

 

進香団の中には、70代80代と思われる老人の姿もちらほら目にします。皆さん強い信仰心で歩き続けています。その敬虔でたくましい姿には感動すらさせられます。我々が歩き続けることができないということは決してないのだと、強く思い知らされるのです。

  

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歩きのポイントをまとめると、以下のようになります。 

 

・イベントの雰囲気を味わいたい方:

 往路1日や復路1日のような日程で神輿の近くを歩くといいでしょう。

 

・体力に自信のない方:

 公共交通機関やドナドナ(服務車・香客車)を利用し、部分徒歩での参加を計画しましょう。

 

・完歩を目指す方:

 明るいうちに出発し、常に神輿より先行して歩きましょう。

 

 

食事について

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香道中での飲食については、心配しなくても大丈夫です。 他の記事でも紹介しましたように、多くの信者やボランティアの方々が、廟や路上など至る所で食べ物や飲み物を準備し、私たちの到着を待っていてくれます。彰化市や北斗、西螺、新港などの地域では、特にこのような人情味を感じることができます。

 

市街地に反して、田舎町、特に深夜にはこうしたポイントも少なくなります。ただ停駕地となる廟の多くでは飲食を提供していますので、特に問題はないでしょう。飲食を提供されている方々は、みな自分の時間とお金を使って、随香客をもてなしています。これも一つの大甲媽祖への参加の形であり、媽祖の庇護への感謝であったり、功徳を積むことで神様のご加護を受けられるよう願っているのです。

 

途中途中にコンビニや商店もあります。荷物を少しでも軽くするためにも、スタート時に水を1本、あとは非常食を少しバッグに入れておけば問題ないでしょう。私はキャラメルを2、3箱カバンに忍ばせています。出発してからゴールまで、お賽銭以外ほとんどお金を使うところがありません。

 

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写真は「流水席」と呼ばれる形式の食事の会場です。感謝の心を忘れず、余分に取ったりはせず、ありがたくいただきましょう。

 

また、出発前および進香道中での食事について決まりがあります。出発の3日前に開かれる宴会の後から新港奉天宮での儀式までの間、肉料理を食べてはいけません。ただし復路は何を食べても構いません。

 

 

宿泊について

ここまで読んでいただいた未来の進香団メンバー(随香客)の皆さんなら、きっとある疑問が浮かんだことでしょう。

「宿泊はどうするの?」

ズバリお答えします。

「野宿です」

 

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なぜなら進香の日程が決まった瞬間、進香ルート近くの宿泊施設は一瞬で予約が埋まります。出発前日の特急の指定席なども発売日に同じく秒殺です。ただ夜到着、深夜出発も多く、暑い日中は休み、涼しい夜に歩く人も多いので、ホテルに泊まる余裕すらないかもしれません。

 

上の写真では、県政府庁舎のロビー部分を随香客に開放しています。そうです、これは行政、警察、地域住民全面協力による一大イベントなのです。ただこのような場所がいつもある訳ではありません。あったとしても、先行するバイクや自転車の人たちに大抵は占領されています。

 

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何年も歩いている先輩方は、それぞれの決まった野宿ポイントがあるようです。多くは廟や寺院になりますが、時折民間の方がとても心地いい休憩ポイントを設置していてくれることがあります。中でも彰化県永靖にある休憩ポイントは、至れり尽くせりとの話を聞きました。

参加者は皆さん、経験の中から場所を見つけていますので、初めて参加する人にとっては、廟以外となると情報を得ることはかなり困難になるでしょう。 

 

そこでその日の目的地(駐駕地)、もしくはさらに先にある停駕地の近くで寝場所を探すことになります。その際は次の四カ所が有力候補となります。テントを持って歩いている方も大勢いますが、ここではテントなし、寝袋のみを前提に考えていきたいと思います。実際大甲媽祖遶境進香の時期にはかなり暖かくなっていますので、寝袋がなくとも、シーツのような身体を覆うものと下に敷くマットがあれば十分かもしれません。

 

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※香客大楼の一室

まずは周辺の廟や香客大楼(宿坊)です。当然駐駕地となる廟は、廟関係者の休憩場所となります。しかし駐駕地周辺やさらに先に進んだ停駕地の中に、随香客の休憩場所として廟の建物内部や香客大楼を開放しているところがあります。

香客大楼では写真のように布団が準備されているところがほとんどです。ただしあまり清潔とは言えませんので、潔癖症の方は寝袋を持参した方がいいでしょう。

 

香客大楼に宿泊した時は積極的に周りの人に話しかけてみてください。進香仲間と知り合える大切なスポットでもあります。外国人だと分かれば、いろいろ親切にしていただけるはずです。また香客大楼がなかったり満員だったりしても、多くの廟では敷地内での休憩ができると思いますが、夜はクローズされるところもあり注意が必要です。

 

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※香客大楼のフロア

香客大楼は何と言っても、シャワーを使えるいった点が大きいですね。こうした場所以外でもシャワー車が何台か出動していますが、すごい行列のため、並ぶには相当の覚悟が必要です。

また大きい廟になると、トイレと併設してシャワー室があるところもあります。シャワーが使用できない場合、男性であればトイレでささっと身体を拭くこともできますが、女性の方にとっては切実な問題かもしれません。進香ルート上にある民家のシャワーを借りている人も多いと聞くものの、私には申し訳なくてそれはできませんでした。

 

携帯の充電ポイントとしても、休憩場所は重要な意味をなします。廟でお借りした際は、出発前に多少のお賽銭を入れていくといいでしょう。

 

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次の候補地は、企業や個人が提供している休憩場所です。工場や倉庫などが寝場所として開放されているケースを時折見かけますので、積極的にほかの参加者や地域住民の方に尋ねてみましょう。シャワーが設置されている施設もあります。

 

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中には写真のようなきれいな休憩ポイントもあり、運が良ければ巡り合うことができるかもしれません。

 

企業や民家の方に休憩場所やトイレをお借りした場合は、結縁品をお渡ししてもいいかもしれません。結縁品については、白沙屯媽祖の記事で紹介していますので、そちらをご参照ください。

[道教巡礼]白沙屯媽祖進香 参加ガイド - 徒 歩 進 香[巡 礼]  

 

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三つ目の候補は学校や公共施設です。当日の駐駕地周辺にある学校の講堂、地域の体育館などの公共施設が開放されている可能性があります。ただ就寝場所が空いているかどうかについては、行ってみないと分かりません。

新港到着時には、周辺の新港國小、新港國中、古民國小、文昌國小などが休校となり、進香団に教室や講堂を開放しています。しかし団体限定でかつ事前に申し込みが必要となるようです。

 

テントを持参すれば、上記写真のように開放されている学校敷地内にテントを張ることは問題ありませんが、歩きの参加者にとって、テントを持参することはかなり厳しい選択です。もしどうしても見つからない場合は、周りにいるベテランそうな参加者を捕まえて質問すれば、きっとみなさん親切に教えてくれると思います。ベテランかどうかは、所持している進香旗を見れば一目瞭然です。

 

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上記三カ所がダメだった場合の最後の選択肢は民家や企業の軒下です。写真のような透天厝と呼ばれるタイプの建物には、道路に面した部分に騎楼と呼ばれる軒下のような部分があります。そこで休ませてもらえるように頼めば、まず断られることはないでしょう。ただ近くにトイレがあるかどうかが、ポイントになります。

 

進香ルート上では、許可をもらわずに軒下をお借りして寝ても大丈夫だそうです。ただごみを放置したり、近くで立ちションをする人たちがいるのも現実です。それには決して流されず、マナーを守ってお借りしたいものですね。

 

運よく親切な住人の方にあたると、トイレやシャワーを貸していただけることもあります。そのご縁で台湾に新しい友人ができるかもしれません。親日な方が多い台湾ですから、女性の参加者は日本人アピールをしてみるのも一つの手だと思います。男は黙って外で寝ましょう。

 

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※廟内で就寝の風景

いずれの場合も、盗難には注意が必要です。時々廟や香客大楼などで盗難があったという話も耳にします。非常に罰当たりですが、進香団の格好をした泥棒が混ざっている可能性も否定できません。また人ごみの中で痴漢にあったという話も聞きます。

 

私はこれまで数多くのイベントに参加してきたものの、幸い盗難にあったことはありません。過度の心配は不要だとは思いますが、最低限の警戒心は持ち続けてください。

 

 

運が良ければ...

大甲媽祖遶境進香には、重要なイベントが二つあります。

それは「鑽轎腳」(神輿くぐり)と「壓轎金」(神輿に敷かれたお金)です。

 

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「鑽轎腳」はどこでもできるというものではありません。 

神輿が進む先に、いつのまにか鑽轎腳を待つ人々の列ができ、神輿は地面にひれ伏した人々の上を通過していきます。鑽轎腳の目的は、厄や良くない運を取り払い、媽祖のご加護を得ることです。また一部では、神輿が頭上を通る時に願いごとをするとそれが叶うとも言われています。

 

もし参加していない他の人のことを祈る際は、その方の服を持って鑽轎腳をするといいでしょう。ただ行列が出来ているからといって、必ず鑽轎腳ができるとは限りません。列があっても神輿はスルーしていくことがあり、運も必要なのです。

 

列に並ぶ際には、失礼に当たらぬよう帽子は脱いでください。また本来進香団に参加できない地域住民の方たちのためのものでもあるので、何も言われないとは思いますが、進香団の一員であることはあまり周りに分からないようにした方がいいようです。特に線香や進香旗を持ったまま、カバンを背負ったまま参加することは避けて下さい。また妊娠していたり、生理期間中の女性は、鑽轎腳をしてはいけないと言われています。

 

鑽轎腳を待つ列に並ぶと、長い場所では1時間以上待たなくてはならないこともあります。そこで鑽轎腳を体験したい方は、長い列には並ばず、神輿の少し前を歩きながら、短い列の鑽轎腳が始まったタイミングでその最後尾に飛び込みましょう。

 

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さらに運が必要なのが「壓轎金」になります。 

「壓轎金」とは、神輿が廟などで停駕する際に敷かれる紙のお金のことです。これがものすごくご利益があると言われています。神輿の下に置かれる時間も重要になってきます。最低でも15分以上は欲しいところですが、まああまり気にしなくてもいいかもしれません。

 

壓轎金は、もともと家を建てる際に使用されていましたが、のちに厄や邪気を取り払ったり、収驚や病気を治す効果があると考えられるようになりました。

よく見られる使用法としては、御守りのように身につけたり、問題事の解決を媽祖にお願いをした後、壓轎金を焼きます。小さい子どもがなかなか泣きやまない場合にも使用されます。

 

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この壓轎金は神輿が立ち去った後に配られるのですが、それがいつどこで配られるのかまったくわかりません。すべては「縁」次第という訳です。私は幸運にも復路で2回、計十数枚を受け取る機会があり、自分の分を1枚残し残りはすべてお世話になっている知り合いに配りました。

 

受け取ることができる可能性が高くなるのは、神輿が廟に立ち寄り出発した直後です。その際廟の関係者より、壓轎金が配られることがあります。また福興宮や奠安宮などの復路の停駕廟の一部では、金紙を持参し神輿グループの人にお願いすると壓轎金と交換してもらうことができるようです。

 

注意点として、神輿が廟にて停駕している際、当然神輿の周りにはとても多くの人が集まりますが、神輿が出発する際に壓轎金の奪い合いが始まることがあります。かなり危険ですので、そうした人ごみにはできる限り近づかないようにしましょう。

 

さらに注意点として、その目的は不明ですが、偽物の壓轎金が配布されることがあるそうです。そこで路上で配られている場合などでは、配布元がどういうところなのかについて、よく確認してください。白沙屯媽祖では聞くことはないのですが、大甲媽祖では時折耳にします。私もいただいた壓轎金の一部をほかの参加者の方に配りましたが、実際本物かどうか疑う人も中にはいました。

 

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ほかに「轎内金」という神輿の中で媽祖像の下に敷かれた金紙もありますが、これは一部廟の関係者しか入手できないようです。もし廟関係者に知り合いがいれば、手に入れることが可能かもしれません。写真は大里杙福興宮の媽祖が湄洲島への進香から戻ってきた後に配られた「轎内金」です。壓轎金より大分大きな金紙ですが、大甲媽祖も同様かは不明です。

 

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そして実はもう一つ、隠しイベントがあります。

それは媽祖の神輿を担がせてもらうことです。信者の方々にとっては、これはものすごいことなんです。ただいつそのチャンスが訪れるのかについては全くわかりません。しかし時間に余裕がある復路の方が必然的に可能性は高くなります。

 

方法としては、神輿の近くをずっと歩き続けることです。ずっと歩いていると、どこかのタイミングで神輿の担ぎ手が神輿グループのメンバーから一般の参加者に代わることがあります。その際に神輿グループの人の近くを歩きながら、「次担がせてもらえませんか?」と思い切って尋ねてみましょう。縁があれば担がせてもらえるかもしれません。ただ無理強いはせず、縁にまかせましょう。また進香旗を所持している人は担ぐことができませんので、その際はほかの参加者の方に一時預かってもらいましょう。

 

私は進香の時と遶境屯區巡安祈福の際に計三度担がせてもらいましたが、その重さはいろいろな意味で肩にずっしりとのしかかりました。

 

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媽祖の日傘の役目を果たす写真の涼傘(娘傘)も、持たせてもらうことができるようです。

 

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他にも、病気の人に効果のあると言われる「敬茶」、進香中のけがなどに効く「海鹽」、結婚運を上げる「報馬仔の紅絲綫」、学業成就の「執事隊の文昌筆」、平穏無事を願う「將軍の篙錢と手錢」、子どもの安全を祈願する「三太子の奶嘴」などがあります。

 

 

搶轎について

鑽轎腳とともに神輿が遅れる主な原因となる「搶轎」(神輿の強奪)について、解説いたします。

自分たちの地区や廟、店舗などに神輿を立ち寄らせたい人たちや、威勢を示したいグループが、進香途上においてその行く手を妨害したり、神輿を奪いにやって来ます。

 

特に彰化市では、複数のやくざや半グレたちの集団が神輿を奪いにくるため、やくざ同士の殴り合いとなったり、警察や媽祖の神輿を守る自警団も加わっての大混乱となったりします。

ニュースでは、付近の企業や店舗が、神輿を自分のところに連れてきたら1分につきいくら支払うといったように、懸賞金を出していると報じられていました。

 

搶轎の始まりははるか昔、彰化南瑤宮の進香の戻り道、雲林県の莿桐地区で行われました。近くの村の信者たちが神輿や香擔を奪い、媽祖のご加護をもたらされるよう、自分たちの集落の廟まで神様を連れていっていました。

 

その後南瑤宮の進香が途絶えると、当時の大甲媽祖北港進香の復路が通過していた彰化県で、地元のヤクザたちが神輿を奪いに来るようになりました。そのため、神様の力の象徴でもある香擔は、進香団の行列から離れ、身を隠すように廟までの戻り道を歩いていました。

 

もともとは彰化市付近では、大甲媽祖の神輿に少しでも長くこの地に逗留していただき、その聖なる力をより多く地域へ分け与えてもらうため、人々は多くの爆竹や花火が準備し、神輿の行く手を阻んでいました。

このような穏便な方式が徐々にエスカレートし、1981年から数年間、神輿が強引に連れ去られる事件が発生すると、現在のような暴力的な形へと変貌していきました。

 

※40秒あたりから

搶轎が行われる有名な場所は、往路では彰化市にある民生地下道であり、裏社会のグループが神輿を奪いに押し寄せます。ここは搶轎が起こるとても有名な場所となり、神輿が到着する頃には、地下道の上に大勢の見物客が集まっています。

復路では彰化市の大埔路です。さまざまな廟から陣頭が神輿を出迎えに集まり、さらには搶轎や殴り合いにまで発展します。

 

そのため近年は警察側も大幅に警護の人数を増やし、大甲鎮瀾宮からはボスである標哥も神輿を守りに顔を出してはいますが、搶轎による混乱は毎年発生しています。非常に危険ですので、参加される方はくれぐれも近寄らないようにしてください。

彰化ほどではありませんが、ほかの地域でも搶轎による小競り合いが発生する可能性はあります。そのような兆候が見られた際は、すぐにその場から離れるようにしてください。

 

これにより以前、「進香団は彰化市を避けるべきかどうか」という話し合いが行われました。彰化市を避けて海側のルートを通る、彰化市を車で通り抜ける、彰化市に駐駕する日程を一日増やす、というこの三つの選択肢の中から占いにより、三番目の彰化市に駐駕する日程を増やすことに決まりましたが、結局状況は改善せず、その後は警察の力を借り神輿を守るようになりました。

 

ただこれもいまや、立派な伝統のひとつとなっているのです。

 

 

最後に

これで大まかな流れはご理解いただけたかと思います。あとは一歩を踏み出すだけです。実際に歩いたレポートもアップしていますので、あわせてご確認ください。

またここでは紹介しきれなかった注意事項やトイレ問題、ドナドナなどについては、次に紹介する白沙屯媽祖進香のページをご参考ください。

 

それでは、大甲媽祖遶境進香の道でお会いしましょう!

  

  

 

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