道教の廟は大きく分けて2種類が存在します。それが「公廟」と「私廟」です。私廟へのお参りは注意した方がいいという話も耳にします。それではどのような違いがあるのか見ていきましょう。
[目次]
公廟と私廟
公廟は信者やその地域の人たちがお金を出し合い建設した公の持ち物であり、管理委員会により運営されています。それに対して、私廟は個人が建てた廟となり、身内や仲間内で管理されているのです。
写真の廟は公廟であり、台湾でよく見られる大きな建物の廟です。公廟は許可なく立ち寄りお参りをしても何ら問題はありません。お参りの方法については、詳しく紹介されているサイトがいくつもありますのでここでは割愛いたします。参拝の際はまず廟に祀られている神様を確認してから、お参りする内容を考えた方がいいでしょう。
公廟の中にも、境主廟、角頭廟、閤港廟、人群廟など、いくつかの分類が存在し、多くは信仰地域や信者の範囲により分けられています。ちなみに角頭廟は、角頭老大(やくざの親分)とは関係ありません。
こちらが街中でよく見られる私廟です。多くはこのような透天厝と呼ばれる建物の一階もしくは最上階に設けられ、個人が管理している小さな廟です。私廟の神様は一般に大きな廟から分霊されていますが、中にはどこからも分霊されていないケースもあると聞きます。
通常このように一見してすぐに私廟とわかり敷居も高く、お参りに立ち寄ることはまずありません。しかし私廟の中にも大きな建物の廟が存在しており、そうなると簡単には見分けがつきません。
公廟と私廟の見分け方
※よくお参りに行っていた私廟
知り合いの家の近くに廟があり、遊びに行った際はいつもお参りに立ち寄っていましたが、ある日知り合いから「あそこは私廟だから、あまりお参りに行かない方がいいよ」と言われました。私はその時初めて、私廟にお参りに行っていたとを知ることになったのです。
しかし大きな建物の廟となると、外部の人間にはなかなか判断がつきません。それではどうやって見分ければいいのでしょうか。
見分けるためのポイントは、廟の管理人である廟公(婆)です。公廟の場合、財団法人として管理をされているため、日中であれば必ず廟公がいます。そして廟公の座っている机の近くには、行事日程の書かれたホワイトボードが設置されています。
100%という訳にはいきませんが、これでかなりの確率でわかると思います。よくお参りに行く廟の場合は、それとなく公廟なのか私廟なのか尋ねてみてもいいでしょう。
私廟へのお参りを注意する理由
それではなぜ、私廟にはあまりお参りに行かない方がいいのでしょうか?
まず一番は、他人の敷地に入りこみ、そこにある神棚をお参りをするような心理的抵抗感が大きいと思われます。そこはあくまでも私有地であり、個人の神棚となるからです。そしてその個人が、正しい心の持ち主であるとも限りません。
二つ目に神像や廟の管理がしっかりなされていない可能性があるという点です。祀られている神様の出所があやしいケースもあると聞きます。
三つ目として、お金の流れが不透明という問題です。またさまざまな口実で金銭を要求されるかもしれません。私廟は公廟と違い、資金の流れを公開する必要がありません。そのため、廟の管理者が好き勝手にやっている可能性も多分にあります。
つまりお賽銭や寄付金などのお金がどこに流れているのか分からない、特定の政治団体と関わりを持っていたり、裏の世界と繋がりがあるかもしれないということです。さらには、公廟と違い運営内容が法に触れている可能性も否定できません。そのため台湾政府は長年宗教団体法の成立を目指していますが、政治家の背後には必ずと言っていいほど宗教団体の存在があるため、未だ成立には至っていません。
土地公廟は公廟か、 それとも私廟か
かの有名な土地公廟の竹山紫南宮も私廟に分類されています。そうなると、ますます判断が難しくなります。
土地公の廟は小さくても公廟に入ると考えていましたが、実際は登記されていないところがほとんどという話を聞きました。竹山紫南宮も歴史的にそのような背景があるのかもしれません。しかし土地公廟は一般に地域の人たちにより管理されているので、お参りをしても問題ないでしょう。
家廟について
彰化県で見かけた「張氏家廟有義堂」という廟です。これは家廟という私廟になり、「張」という姓の一族のみが参拝します。そこで関係者以外は立ち入らない方がいいでしょう。
金門島に行ったことがある人は、もしかすると家廟を知っているかもしれません。金門島には多くの「李」姓などの家廟が建てられています。
これは嘉義県で見かけた「陳」姓一族のための家廟です。家廟では門が閉じられ、外部の者が入れないところが多くなっています。
以前訪れた南投県で「張琯溪公宗祠」という廟を見かけたものの、入口には関係者以外立ち入り禁止の看板が掛けられていました。その際に知り合いから教えてもらい、家廟という存在を初めて知りました。廟名の頭に「姓」がある場合は家廟であると考え、むやみに立ち入らない方がいいでしょう。
小さな祠について
道端にある小さな祠は、私廟が多いと聞きます。ただ公廟、私廟を問わず、小さな廟や祠はむやみに拝んではいけません。なぜなら次の記事で紹介する陰廟が多く、"なにか"を連れてきてしまう可能性があるからです。
※ 陰廟についてはこちらへ ※
小さな祠で一番よく見かけるものが五営将軍の小廟です。これはその地区にある大きな廟の管轄範囲に設置されています。道教では五営将軍の部下である神兵が見回りをして、その地区の平和を守っていると信じられています。
中営を筆頭に、東営、南営、西営、北営があり、よく見ると、〇営と書かれていますのですぐに見分けることができます。私たちが普段道端で見かける小さな祠の多くは、この五営将軍の小廟であり、多くは公廟に属しています。
当然お参りをしても全く問題ありませんが、先に書いたように、小さな廟には怨霊を祭る陰廟が多いため、よく分からないうちはお参りは避けた方がいいでしょう。
最後に
私廟は家廟のように、身内や知り合いの間で祀られていることが多く、一部の例外を除き、外部の人間がお参りすることはほとんどありません。
ただ、次に紹介する怨霊を祭る「陰廟」とは違い、お参りをしない方がいいという訳ではありません。もし祀られている神様になにか特別な思い入れがある場合は、廟の方に一声かけてからお参りをさせてもらうといいでしょう。
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