徒 歩 進 香[巡 礼]

ハマるぞ台湾!道教文化

仏教進香・遶境レポート

 

台湾の仏教行事の中にも「徒歩進香」や「遶境」に似たイベントがあると聞きつけ、早速二つのイベントに参加してまいりました。一つは台南市で行われる観音菩薩の里帰りもう一つは高雄市で行われる観音菩薩の地域巡行という仏教イベントです。スタートからゴールまで、イベントの詳細について紹介させていただきます。

 

 

[目次]

 

 

東山迎佛祖

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概要

【東山迎佛祖】

 

主催寺:東山碧軒寺[1844年建立] f:id:balbaltan:20190129105443j:plain

 

《送佛祖》

出発点:東山碧軒寺(台南市東山区

目的地:火山碧雲寺(台南市白河区

開催時期:旧暦12月23日

開催期間:1日

移動距離:約15km

 

《迎佛祖》

出発点:火山碧雲寺(台南市白河区)

目的地:東山碧軒寺(台南市東山区

開催時期:旧暦1月10日

開催期間:1日

移動距離:約25km

 

参加費:なし(申込不要)

参加人数:数千人

特徴:重要無形文化遺産に登録された数少ない仏教行事の一つ。旧正月前に碧雲寺へ向かい、旧正月後碧軒寺へ戻る

住所:台南市東山区東山里218

アクセス:北東山バス停下車30秒(新営駅からバスで25分)

参考HP:

東山碧軒寺全球資訊網-觀音佛祖廟

 

《送佛祖》ルート

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《迎佛祖》ルート 

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行事について

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18世紀初頭、中国から観音菩薩を携えやってきた法師は、現在の台南市白川区にある山のふもとに寺院を建造し、観音菩薩を祀りました。そしてその後山の中腹へと移転しました。それが現在の火山碧雲寺です。しかし19世紀半ばになり、戦乱による焼き討ちや強奪に遭うと、山を下りた平地にある東山に簡素なお寺を建設し、そこに観音菩薩(正二媽)を安置しました。それが現在の東山碧軒寺になります。
その後毎年年越しの時期になると、正二媽は碧雲寺に里帰りし、年末年始の時間を「実家」で過ごすようになったのです。
毎年旧暦12月13日早朝、信者は正二媽を神輿に載せて碧軒寺を出発し、碧雲寺まで昔ながらの道を歩いて15kmの道のりを帰ります。
そして年越しの後、旧暦1月10日深夜に帰路につき、多くの信者は松明を手に山道を歩きます。往路復路の道は異なり、復路の方がやや長くなっています。
 
送佛祖レポート

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当日神輿は朝7時ごろ出発となるため、近くの街に前泊し始発のバスに乗りました。6時すぎに碧軒寺に到着すると、すでにそこには長い長い行列ができています。並んでいる方に話を聞くと、どうやら結縁品(記念品)をもらえるようです。

 

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まずは仏様(観音菩薩)にご挨拶です。個人的なことや行事が無事に行われることをお祈りしました。

  

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廟の外では参加者に無料の朝食が振舞われており、その前の道には、500m以上に及ぶ長い長い列が出来ています。一体なんの行列でしょうか? 神輿が出発すると理由はすぐにわかりました。「鑚轎脚」を待つ行列だったようです。

 

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そしてなんと、乩童の姿を見かけました。乩童は道教特有の存在だと思っていたのですが、仏教イベントにも参加していたことに驚きです。

 

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子どもたちによる陣頭です。みんな長い木の棒を持ち歩いています。小さい子もいてとても可愛いですね。ほかには菅笠を手にした老人のグループぐらいで、陣頭はとてもシンプルです。 

  

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多くの住民の方が「擺香案」(机の上に食べ物を並べ線香を供える)をして、熱心に拝んでいます。

 

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頭旗グループに追いつきました。頭旗に頭燈、なんだか道教の進香にそっくりです。

 

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ルート上には所々に写真のような補給ポイントがあります。頭旗に追いついたあたりで、進香仲間の知り合いに出会いました。そこからしばらくは雑談しながら歩きましたが、 基本一人で歩くのが好きなので、しばし一緒に歩いた後は、再び自由行動です。

 

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最初の中継ポイントに到着です。どう見ても道教の廟ですね。お参りして先に進みます。「古香路」と呼ばれる昔ながらの山道までには、再び神輿と合流する計画です。 

 

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学校はすでに春節の休みとなったようで、このイベントにはとても多くの子どもたちが参加していました。きっとハイキングのような感じなのでしょう。

 
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こちらの中継ポイントでは大根餅が振舞われており、美味しくいただきました。 頭旗から大分先行してしまったようで、周りに人はかなりまばらです。

 

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ここも昔は舗装のない山道だったのでしょう。遠い昔に想いを馳せながら歩き続けます。青空の下歩く田舎道は気持ちがいいですね。

 

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次の中継ポイントでは、お参りの後また軽食休憩です。時間調整のために、すこし長めの休憩をとりました。

  

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だんだんと上り坂になってきました。参加者のおばあさんたちと雑談しながら坂を上っていきます。 この区間は、竹林を吹き抜ける風を浴びながら気持ちよく歩けました。

 

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いよいよ山道「古香路」に突入する前最後の中継ポイントです。エネルギーを補給しながら、神輿の到着を待ちます。少し休憩していると、神輿に続いて、参加者の方々も続々と到着し始めました。

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昔ながらの山道である「古香路」に向かって出発です。最後は神輿と一緒にゴールを目指します。

  

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少しずつゼーゼーハーハーと息が切れはじめてきました。山道はだんだんと険しさを増していきます。 また足元が不安定なため、みなうつむきながら山を登っていきます。想像以上に険しい山道に、その後私もすこし遅れ始めました。

 

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写真ではなかなか伝わりませんが、かなりの急こう配です。 

 

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急こう配の前では、神輿チームはしばし休憩を取り、体力を回復させます。 

 

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神輿が信者を引き連れ急こう配を上ってきます。古香路のハイライトらしく、多くの人たちが坂の上でカメラを手に神輿の到着を待ち構えていました。

 

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一番の難所を越えると、ようやく先が見えてきました。

 

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当日は本当にいい天気に恵まれ、気持ちよく歩くことができました。ここから先は、神輿より少し先行します。

 

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ここでやっと枕頭山の山頂が見えてきました。美しい景色に、疲れた身体も癒されるようです。

  

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いよいよゴールの碧雲寺が視界に入ってきました。この美しさを、写真では表現しきれないところが残念でなりません。

 

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碧雲寺までの最後の道は、神輿や多くの信者の方たちとともに歩きます。 

 

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おばあさんが杖を手にここまで歩いてきたようです。その信仰心の強さに、感動すら覚えました。

 

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碧雲寺前駐車場からの眺めもいいですね。 ここまで登ってきました。

 

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そしてようやく目的地の碧雲寺に到着です。他の参加者の皆さんとともにお参りをし、これで終了となりました。お寺を出てすぐに碧軒寺まで戻る送迎バスの列に並びましたが、結局この時間が一番疲れたように思います。東山に戻り、碧軒寺にお礼の報告をして帰路につきました。

 

 

 

羅漢門迎佛祖

 

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概要

【內門紫竹寺羅漢門迎佛祖遶境活動】

 

主催寺:内門紫竹寺[1733年建立]

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開催時期:不定

開催期間:4日間(2019年より土日のみ開催)

移動距離:約76km(4日間計) 

 

参加費:なし(申込不要)

参加人数:1万人以上

特徴:重要無形文化遺産に登録された仏教行事の一つ。お寺の周辺の地域を4日間に分けて巡行する。

住所:高雄市內門區觀亭里中正路115巷18號

アクセス:観音亭バス停下車1分(台南駅からバスで約85分)

参考HP:內門紫竹寺 

 

行事について

200年以上の歴史を有し、内門区および周辺地域が参加する宗教行事です。さまざまな儀式や陣頭が有名であり、区内全住民が総動員で参加する、高雄における盛大な民俗文化行事の一つとなっています。1969年、政治的な要因で分離し建立された内門南海紫竹寺が独自に遶境を実施するようになり、2010年に高雄政府の調整により、両寺が初めて共同で遶境を行い、その後は3年ごとに交代で実施することになりました。2018年から3年間は内門紫竹寺が主催を行い、2019年にはこれまでの4日間連続の実施から、土日2回計4日間実施へと変更となりました。その背景には、宋江陣などの陣頭に参加する地元民の休日調整が困難という問題があります。また内門紫竹寺が管轄する遶境が行われる地域では数々の不思議な出来事が起きており、それも強い信仰心へとつながっているようです。

 

迎佛祖レポート

もともと参加する予定は全くなかったのですが、ほかの進香が途中リタイアとなったため、急遽知り合いが進めてくれたこのイベントに参加することとなりました。

公共交通機関で朝7時の出発に間に合わせるためには、現地に前泊する必要があります。当日乗せて行ってくれるという方もいましたが、自力で行くことにしました。紫竹寺には香客大楼がないため、近くの街旗山に前泊して、当日早朝タクシーで向かうことにました。

 

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旗山は初めて訪れましたが、佛光山と合わせて泊りがけで観光に来たいと思えるような、心地いい雰囲気に包まれた街でした。宿泊先は、台湾の知り合いに、「そんな安いところがあるの!?」と言われるような安宿でした。ちなみに旗山から紫竹寺までタクシーで250元です。

 

f:id:balbaltan:20190322183826j:plain6時過ぎに到着するとまばらだった参加者も、お参りをして辺りをぶらついている間にだんだんと集まってきました。

 

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澄み渡った青空の下、三基の神輿の後に続きます。敬虔な信者の皆さんはみな太い線香を手に歩いています。神輿の近くはすごい人ごみです。

 

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多くの信者の方が神輿の後ろに続いています。私自身、遶境はあまり好きではないのですが、このように多くの神輿に付き添う「隨香客」が参加するイベントは、その限りではありません。

 

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神輿の後ろは信者の方々に譲り、私は神輿より先行して歩きます。アップダウンが続く山道ですが、青空の下、田舎道を歩くのは心地いいですね。

 

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頭旗グループを追い越すと、周囲を歩く参加者の姿は大分まばらになってきました。

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立ち寄り先の廟では、どこでも盛大なお供え物が準備されています。

 

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このイベントで最も感動したところは、地元の敬虔な信者の方々です。山道を進むと多くの集落を通過します。そのほとんどの住民の方が写真のように、飲み物や食べ物を準備して私たちの到着を待っていてくれます。中にはビールやたばこまでありました。これは東山迎佛祖では見られなかった光景です。東山迎佛祖では、寺の服務車や立ち寄り先の廟が飲み物や食べ物を提供してくれておりました。正直いただいた飲食の量は東山迎佛祖と変わりませんが、やはり廟が準備したものと、地元住民の方が提供してくれたものでは、そのありがたみが全く違います。

 

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こうしたイベントでは、「擺香案」というお供え物を準備し、線香を手にし、金紙を焼いて待つ信者の方々の姿をよく目にしました。しかしこのように多くの住民の方々が飲食を提供しているイベントは、私が知っている限り、大甲媽祖や白沙屯媽祖の進香イベントぐらいです。こうした「人情味」こそ、道教イベントが私を惹きつけてやまない一番大きな理由になります。

 

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途中道を間違えて、2kmほど遠回りをしてしまったため、その後再び神輿の隊列に合流しました。このイベントで素晴らしかったのは、一定距離ごとにごみ袋が設置されていたことです。そのごみ袋のおかげで道が違うことにも気づけました。残念だったことは、バイクの多さです。山道を非常に多くの参加者のバイクが行ったり来たりしており、徒歩参加者にとっては歩きづらい状況となってしまいました。

 

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昼食会場に設置された「流水席」です。ここまで大規模なものは初めてみました。「流水席」とは、大きな入れ物に盛られた食事を、参加者が思い思いに器に盛り付けて食べるといった食事の形式です。進香や遶境では、よほど小規模のイベントではない限り、お弁当ではなく、こうした形で食事が準備されています。

 

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南海紫竹寺まで神輿に付き添った後は、ひとり先を急ぎました。神輿が内門紫竹寺まで戻るのは20時ごろになるため、そうなると帰りの電車に間に合わなくなってしまいます。そこで神輿より先に内門紫竹寺へ戻り、お参りを終えると、帰路につきました。

案内では22kmとなっていましたが、多少遠回りをしたものの、当日の歩行距離は30kmを超えていました。

 

最後に

仏教独自の「徒歩進香」や「遶境」を期待して参加しましたが、残念ながら、実際はどちらのイベントも道教の進香や遶境イベントとほぼほぼ変わりがありませんでした。

仏教:郊外の山の中に大きなお寺があり、信者はそこで修行する。

道教街中に廟が点在し、信者は日々お参りに訪れる。

もともと台湾の仏教と道教には、ざっくりとこのようなイメージを持っていました。台湾では仏教と道教の境界線はかなりあいまいであり、あまり変わりがないという話もよく耳にしてきましたが、現実問題として、想像以上に融合しているようです。特に観音菩薩は、仏教、道教の間に存在する一番あいまいな仏様(神様)なのかもしれません。

しかし東山迎佛祖、羅漢門迎佛祖のどちらとも、タイミングが合えば、ぜひもう一度参加してみたいと思えるイベントでした。

 

 

 

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