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徒 歩 進 香[巡 礼]

ハマるぞ台湾!道教文化

[道教巡礼期] 進香期レポート

 

 

ここまで徒歩進香について、詳しく紹介してまいりました。しかし進香はまだまだ奥深く、実はもう一つ楽しみ方があります。それが「進香期」の見物です。廟で待ち構えながら、波が押し寄せるようにやってくる進香団を見物します。

我々が歩く徒歩進香も、進香期を構成するごくわずかな一部分に過ぎません。

 

 

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※ 進香ってなに?という方はこちらへ ※


 

[目次]

 

 

進香期とは

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以前少しだけ紹介しましたが、進香(道教の巡礼)のうち徒歩で行われるものはほんのごく一部のみであり、99%以上の進香は車やバスに乗り行われます。バスで現地入りし、陣頭(音楽や踊りなど)は駐車場や廟近くのスタート地点から廟までの間、大体数百メートルの距離で行われます。

 

そこで我々は廟で待ち構え、さまざまな進香団の陣頭を見物をするのです。遶境では長く続く陣頭の行列を路上で見物しますが、それに対して進香期では、波のように押し寄せる短い陣頭を廟で待ち構えて見物することになります。

 

その進香団が集中する時期を「進香期」と呼び、多い廟では1日あたり大小さまざま100グループ以上の進香団が訪れます。進香期は一般に神様の誕生日前後となるので、見物に行く場合は誕生日前数週間の週末が狙い目です。

 

中でも今回二つめに紹介する「南鯤鯓代天府の進香期」は、進香期の中で唯一重要無形文化遺産に指定されています。南鯤鯓代天府は分霊先が最も多い廟であり、主祭神である五府千歲(王爺)それぞれの誕生日には、多くの進香団が訪れます。

 

 

人気の高い神様、進香でにぎわう廟

台湾で最も多く祀られている神様はおそらく福徳正神(土地公)でしょう。その次に王爺、天上聖母(媽祖)、玄天上帝などの神様が続きます。 觀音菩薩は仏教と道教の間に存在しているため、ここでは省略しています。

 

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<神様の誕生日>

・福徳正神:旧暦二月二日(旧暦八月十五日)

・王爺:旧暦四月二十六日、旧暦四月二十七日、旧暦六月十八日、旧暦八月十五日、旧暦九月十五日...

・媽祖:旧暦三月二十三日

・玄天上帝:旧暦三月三日

※王爺の誕生日がなぜたくさんあるのかについては、後ほど解説いたします。

 

一覧からわかるように、旧暦三月前後に多くの進香期が集中しています。

 

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進香期がにぎわう廟、つまり分霊数が多い廟は以下の通りです。

・福徳正神:高山巖福德宮(屏東県恆春鎮)

・王爺:南鯤鯓代天府(台南市北門区)

・媽祖:北港朝天宮(雲林県北港鎮)、鹿港天后宮(彰化県鹿港鎮)

・玄天上帝:松柏嶺受天宮(南投県名間郷)

 

ただし福徳正神の多くは集落の小廟であるため、進香は他の神様に比べ少なくなります。

 

 

進香期見物に出発

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台南市北部の新営駅前

今回は中壇元帥(太子爺)と王爺呉府千歳)の誕生日が近いということで、秋の週末を利用し台南市北部にやって来ました。それぞれの神様を祀る総本山とも言える廟に進香期の見物に行く計画です。台南市の有名な廟の多くは中西区近辺に集中していますが、北部にもいくつか点在しています。

 

進香期の見物は春に行った松柏嶺受天宮以来となり、わくわくしながらの出発となりました。今回拠点とした新営の駅周辺には、近くの廟から派遣され設置された非常に珍しい「駅の五営将軍」の祠があります。時間があれば合わせて探してみてください。

 

 

新営太子宮(中壇元帥)

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まず最初に訪れたのは、中壇元帥の総本山として有名な新営太子宮です。新営駅からバスで30分ほどの距離に位置しています。

 

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それでは、道教で人気の神様である中壇元帥について簡単にご紹介します。

 

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中壇元帥というとあまりピンと来ないかもしれませんが、3人の神様が踊る陣頭(電音三太子)をどこかで見たことがあるかもしれません。そのうちの一人が中壇元帥です。中壇元帥とは本来役職名であり、名前を哪吒と言い、そうです、あのアニメ「封神演義」にでてくるナタクになります。残り二人はお兄さんの金吒と木叉、ちなみに父親は李靖です。

 

中壇元帥は地域の守り神「五営兵将」のリーダーであり、日々神兵とともに街の平和を守っています。そうなると上司は玄天上帝なのかもしれません。中壇元帥にはいろいろな逸話がありますので、興味がある方はぜひ調べてみてください。かなり暴力的な神様です。

 

 

新営太子宮進香期レポート

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新営太子宮にお昼頃到着すると、廟前広場は進香団と見物客ですでにとてもにぎやかです。

 

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まずは廟のすぐ目の前にある旧廟をお参りします。ここでも陣頭が行われています。

 

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よく見かける誰も観ていない布袋劇が演じられていました。これは私たちではなく、神様をもてなしています。

 

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続いて本廟をお参りするため、他の参拝客について建物の中へと入ります。

 

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以前訪れた時にはなかった礼拝用の台が設置されており、奥までは入れないようです。人ごみの中で神様に手を合わせます。

  

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廟の扉の前には多くのお供え物が供えられています。

 

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入口横では金紙(紙のお金)や線香が売られています。金紙の価格は、100元の廟と気持ちを入れてくださいという廟に分かれます。 

 

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廟グッズが売られています。私も廟の帽子を購入しました。

 

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金紙を焼く金炉からは煙が途切れることがありません。

 

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外に出て空を仰ぐと、屋根の上で輝く太子像が印象的です。

 

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お参りを終えたら、いよいよ進香期見物です。廟から数百メートル先の路上より、陣頭がスタートします。

 

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廟前の道路は進香団であふれかえり、その中に早速「乩童」の姿を見つけました。進香期見物のお目当の一つは、やはりこの神様が乗り移る存在である乩童ですね。

玄天上帝や王爺、中壇元帥の進香団では、乩童の姿を見ることができます。媽祖や他の神様でも時折見かけます。

 

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乩童は果たして本物なのかという点については、正直なところ半信半疑です。中には一部本物がいるかもしれませんが、多くは演技だろうなと思っています。それも含めて見物してみると、いろいろ楽しいですよ。

 

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このおばあさんも乩童でしょうか。もしかすると「走靈山」の一派かもしれません。太子宮には多くの靈山派が「走靈山」に訪れていると聞きます。

 

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進香団ごとに毎回大量の爆竹が準備されます。

 

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爆竹の音が鳴り響き、乩童は裸足で火のついた爆竹の上を歩いていきます。

 

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進香団や見物客はみな煙と塵に包まれます。

 

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進香団はお参り(謁祖や刈火)を終えると、神輿と共に帰っていきます。

 

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爆竹のゴミは、ボランティアの方々が清掃しています。お疲れさまです。

 

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掃除を終えきれいになった広場に、また次の進香団がやって来ました。

 

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波のように押し寄せる進香団では、さまざまな陣頭を楽しむことができます。こちらは二人組で踊る舞獅です。

 

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陣頭の中でも人気の高い八家将がやってきました。

 

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こちらは千里眼将軍に似ていますが、ちょっと違うようですね。文和審君か武洪将軍のどちらかかもしれません。

 

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辣妹によるポールダンスがやってきました。

 

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廟の上階からの眺めです。奥に見えるのが旧廟ですね。

 

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週末ということもあり、広場は進香団と見物客で埋め尽くされています。

 

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廟脇の建物で進香の順番待ちする神輿や陣頭たちです。

 

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駐車場には多くの進香団の観光バスが停車しています。

 

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神輿や陣頭の道具を運ぶトラックです。

 

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太子宮のFBを確認すると、なんと新北市から数日かけて歩いてきた徒歩進香団が間もなく到着するとの投稿を見つけました。

 

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廟の裏では多くの屋台が軒を並べ、ちょっとした夜市のようです。 

 

こうして半日、数多くの進香団を見物し、廟を後にしました。

 

 

南鯤鯓代天府(王爺)

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翌日訪れたのは、新営駅からバスで1時間弱の北台南に位置する、王爺信仰の総本山である南鯤鯓代天府です。唯一国定重要無形文化遺産に指定されている最も有名な「進香期」と言っていいでしょう。南鯤鯓代天府の進香期は1年に4回あります。

 

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※正統鹿耳門聖母廟

南鯤鯓代天府は台南市安南区にある鹿耳門聖母廟と並ぶ規模を誇り、とても壮大です。

 

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それではなぜ王爺の誕生日が複数あるのかという点について、簡単に解説します。

それは「王爺」という名称は、一柱の神様を指している訳ではなく総称となっているからです。「〇府千歳」とあるのが王爺のことですが、いろいろな人物が王爺として神格化しており、この〇の部分にその人物の姓が入ります。その数は100を超えていて、中でも代表的なものが、五府千歳と言われる李・池・呉・朱・范です。

 

王爺とはもともとは疫病神であり、海を越えて疫病を連れてくると言われていました。それが転じて疫病を追い払う神様へと変わり、疫病がなくなった現在では厄災を取り払ってくれる神様としてあがめられるようになりました。台湾でよく見られる代天府と名がついている廟は王爺の廟です。

 

北部の城隍爺、中部の媽祖、南部の王爺と言われるように、特に台湾南部で王爺信仰が盛んです。有名な焼王船も王爺の行事になります。

 

 

南鯤鯓代天府進香期レポート

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進香期見物二日目、バスが廟に近づくと、遠くから爆竹や花火の音が鳴り響いてきました。すでに進香団が到着し、現地はにぎやかなようです。

 

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廟前の礼拝場は、進香期を見物する人々で混み合い、爆竹や音楽が鳴り響き、ちょっとしたカオスでした。

 

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奥に見えるのが、南鯤鯓代天府の本堂と言える建物です。なかなか長い歴史を感じさせる風情が漂っています。

 

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廟の中もすごい人ですね。こちらも手前に柵が設けられ、神様の前まではたどり着けません。遠くから手を合わせます。

主祭神は五府千歲(五柱の王爺)です。そのうち二柱の誕生日が近いため、進香期は年に4回となります。今回は呉府千歳の進香期です。

  

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お参りを終え、廟前広場に戻ってきました。進香期には次から次へと進香団がやってきます。 

 

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進香団の規模も、数人から100人を超えるものまでと様々です。

 

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陣頭の中に馬の行列を見つけました。

 

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進香に向かうグループと入れ替わりに、お参りを終えた進香団が駐車場へ戻っていきます。

 

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乩童です。王爺の進香団でも乩童の姿を見ることができます。

 

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背中の傷が見てとれます。中にはひどく流血している乩童もいます。

 

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陣頭の一つ、舞獅による獅陣です。日本の獅子舞に似ていますね。

 

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同じく陣頭の一つ、八家将です。 陣頭は三種類あり、舞獅や八家将などの武陣、太鼓や管楽器などの文陣、お葬式で楽器を弾いたり踊ったりする喪葬陣です。このうち前者二つを、進香や遶境などで見ることができます。

 

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これは王爺に付き従う謝将軍と範将軍でしょうか。遶境では、将軍の紙で作られた装飾(篙錢)が落ちると、信者の方々が大事そうに拾い集めています。

 

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廟前の礼拝場では読経による参拝が行われていました。

 

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廟の裏手にある凌霄寶殿です。ここは玉皇大帝などの神様が祀られています。

 

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お参りに使う線香や金紙はこちらで購入します。セットで100元です。ちなみに「ご自由にお使いください」の線香は置かれていませんでした。

 

廟によくある無料の線香は、一般に廟が用意したものではなく、信者の方々が寄付したものです。私もよく行く廟では、時々多めに購入し線香入れに入れたりしています。

 

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ガスバーナーではなく線香を押し付けて火をつける珍しいタイプです。この方がつけやすいですね。

 

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廟の中にはコンビニや郵便局までありますよ。

 

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敷地内にあるレストランや宿泊施設の入った建物です。

 

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食堂や土産物屋が集まる一角。ちょっとした市場のようです。

 

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敷地内の庭園も美しく管理されています。

 

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駐車場には進香団の観光バスが所狭しと停車しています。

 

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南鯤鯓代天府の十大特徴が紹介されていました。分霊先は26,000にものぼるようです。

 

この日も数多くの進香団を見物し十分満足しました。最後にもう一度手を合わせた後、爆竹の音を背中に聞きながら帰途につきました。

 

 

注意事項

進行期を見物する上でいくつか注意点があります。

 

1.神輿に近寄ったり、前を横切らない

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進香団のお参りを邪魔してはいけません。ただ正直、前を横切らないことには移動ができなくなります。その際はお参りしている最中の神輿や神像の前は横切らないように注意しましょう。

 

2.爆竹に注意する

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とにかく至る所で爆竹がならされます。爆竹に火をつける際、周りに声をかけてくれる人もいますが、たいていは気にせず鳴らされます。たまにいきなり足元で爆竹が破裂し、驚かされることもあります。

 

そこでやけどをしないよう、長ズボンで見物に行くことをおすすめします。そして写真のように爆竹が並べられている場所には、できる限り近づかないようにしましょう。

また音もものすごいため、慣れないうちは爆竹の間は耳をふさいだ方がいいかもしれません。

 

3.煙や塵を吸い込まないよう対策を

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廟周辺には爆竹や花火による煙や塵が充満しています。マスクや口を覆うタオルを忘れずに持参しましょう。

 

 

その他廟の進香期

進香期は歴史ある大きな廟ではたいていどこでも行われています。最後にその他廟の進香期の様子をご紹介します。

 

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鹿港天后宮進香期(媽祖)

 

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大甲鎮瀾宮進香期(媽祖)

 

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北港朝天宮進香期(媽祖)

 

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松柏嶺受天宮進香期(玄天上帝)

 

続いて松柏嶺受天宮の進香期で見かけた乩童たちをご紹介します。

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最後に

進香期は遶境の見物と同様に、台湾の道教文化を手軽に楽しむことができる機会です。旅行の日程を決める際には、ぜひ神様の誕生日も合わせて確認してみてください。

 

 

このブログでは、 毎年台湾で数十万人が参加し、最大の盛り上がりを見せる道教巡礼イベント「徒歩進香」を紹介しています。信徒でなくても、旅行者でも気楽に参加できます。

道教や廟に興味がある方、ウォーキングや賑やかなイベントが好きな方は、ぜひ一度参加してみてはいかがでしょうか。台湾のことがより好きになると思います。

 

※ 台湾文化を代表するイベント徒歩進香についてはこちらへ ※

 

 

 

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